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事例12:一般の方には難しすぎる障害年金の手続き
(非定型精神病)

傷病名  アルコール依存 → 躁うつ状態 → 非定型精神病
年金の種類  障害厚生年金(旧法)
等級  2級
請求方法  障害認定日請求(遡及請求)
年齢・性別  50歳・男性

 村山耕三さん(仮名。50歳)には複数の精神疾患があって、これまで何度も入退院を繰り返してきました。当然就労はできない状態で、高齢の母親の介護を受けながら二人暮らしをしています。

 高校卒業後、就職した仕事場でのトラブルが原因で、20歳頃からアルコール依存、躁鬱状態から非定型精神病へと一気に病状が進行し、浪費やDV事件なども起こしました。

 当初、母親に連れられて訪れた病院で即入院となったものの、病院内で迷惑行為を起こしたことから病院を転々とすることになってしまいました。病状が軽快して再就職しても、どこでも仕事が長続きしないため定職には就けず、今は全く仕事が出来ない状態です。

 母親は、以前に精神障害者保健福祉手帳を申請したとき、障害年金の申請にもチャレンジされたそうですが、年金事務所で受けた説明の意味が理解できなかったため、申請書類の不備を処理できずに途中で手続を断念し、その後10年以上経ってから障害年金支援ネットワークへ支援要請があったものです。

 この事案は、初診日が古い上に多くの病院で受診していたことから個々の病院での受診歴が短かく、カルテ等がない可能性、年金未納期間の点在によって保険料納付要件が充足できない可能性など否定的な要因が考えられたほか、就業歴があるという点で社会的治癒の可能性があるなど、多くの流動的要素が考えられました。またこれは仕方の無いことですが、依頼者の記憶の曖昧さ等、それぞれに確実に対処していかなければならない非常に複雑な事案でした。

 そこで、それらの状況を踏まえつつ調査したところ、昭和50年当時の初診病院に運良くカルテが残っていて、受診状況等証明書(初診日の証明)が取れることになりました。

 それを取ってみると、なんとそこに入院歴、通院歴が細かく書かれてあって、障害認定日ごろには通院歴もあることが分かり、30年近く前の障害認定日に遡って障害年金を請求できる可能性が出てきました。それで早速その診断書を依頼しましたが、詳しい病状の記録まではないということで断られてしまいました。

 ところが、後日その病院からの連絡で、同じ頃に別の病院へ転医していたことが分かり、さらにその病院へ照会したところ、ここでも運よく当時のカルテが残っていて診断書を書いて頂けることになりました。

 そして、現在の病状の診断書と、初診から約30年間の病歴について闘病、就労時の出来事、DV等のエピソード等を詳細に記述した申立書を作成・添付して裁定請求を行い、旧厚生年金保険の2級障害年金を獲得することができました。

 このように、ご本人の障害の状況を説明するための申立書を作り上げる過程では、その間に突き当る壁を一つずつ乗り越え、ようやくのことで完成に漕ぎ着けます。依頼者と何度もやり取りを重ね、細かなこと一つでも気づけば電話して、途切れた記憶の糸を繋ぎ合わせていきます。疑問点、辻褄(つじつま)が合わない点などについて、とことん質問を投げかけます。それらのやり取りを通じて、薄れていた依頼者の記憶を蘇えらせ、最終的に、初診から現在までに連なる1本の線として申立書を完成します。

 また、医師には診断書の書き方についても文書等で細かくお願いします。必要な場合は、直接面談することもあります。診断書と申立書は車の両輪ですから、どちらか一つでも具合が悪いと、まっすぐに進まず、受給権を逃してしまうかも知れません。

 請求者ご本人やご家族が役所の求めるままに書類を整えても、場数を踏んだ社労士が手続きを行うように、うまく行くとは限りませんし、時にはこの件のような、我々社労士でさえ難しい事案があります。

 障害年金を請求なさる皆さんご自身が手続きをおやりになるのは、おそらく一生に一度のことでしょうが、我々障害年金支援ネットワークの社労士には、個人や集団の多くのノウハウが蓄積されています。これから障害年金の請求をしようとなさる皆さんが、このネットワークを利用しない手はないと思います。

 決して最後まで諦めないでください。私たちは、皆さんの味方です。一人で悩まず、どうか気軽に相談してください。それが障害年金受給への近道だと思います。

 

担当社労士 K.I(大阪府)

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