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知的障害と障害年金

掲載日:2021年2月18

 知的障害(精神発達遅滞)とは、知的能力の発達が同年代の人に比べて低い水準にとどまっているため、生活に支障が生じ、持続的に援助が必要な障害です。

 おおむね発達期(18歳まで)にあらわれるものとされています。一般的には知能指数(IQ)によって、軽度(IQ51~おおむね70)、中等度(IQ50~36)、重度(IQ35~21)、最重度(IQ20以下)となっています。

 ここでは、知的障害について、どのようなときに障害年金が受給できるのか、請求(申請)する際はどのようなことに注意すればよいのか等を解説します。

1. 知的障害で障害年金を請求(申請)するための前提条件

女性のイラスト

 通常、障害年金をもらうためには、「初診日要件」と「保険料納付要件」を満たしていることが必要です。

 しかし、知的障害は、先天性またはおおむね発達期(18歳)までにあらわれる障害のため、上記2つの要件は考えなくてよいことになっています。

 障害の状態が定められた基準に該当しているかどうかで、障害年金の支給や等級が決められます。

2. 知的障害の『障害認定基準』

 知的障害がどのような状態のときに障害年金の対象となるかを示した『障害認定基準』は、以下の通りです。(※一部を抜粋し、分かりやすく編集しています。原文はこちら

 症状が重い方から順に1級、2級、3級となっています。

 知的障害は、他の疾患とは異なり、先天性または出生後の早い時期に何らかの原因で生じる障害です。

 そのため、通常は障害基礎年金での請求(申請)になり、1級または2級に該当しないと障害年金が支給されません。

 等級によって、支給される障害年金の額が異なります。(障害年金の額はこちら

障害の程度

(等級)

障害の状態

1級

知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2級 知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの
3級 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの 
  • 知的障害の認定に当たっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する。 また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。 
  • 日常生活能力等の判定に当たっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努める。 
  • 就労支援施設や小規模作業所などに参加する者に限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。 したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

3.『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』

 知的障害で障害年金を請求(申請)するときは、「精神の障害用」の診断書を使用します。

 2016年(平成28年)9月に運用が開始された『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』では、「精神の障害用」診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」に応じて等級の目安が定められています。診断書の裏面と照らし合わせてご覧ください。

「精神の障害用」の診断書裏面

「日常生活能力の判定」とは

 「日常生活能力の判定」とは、日常生活の7つの場面における制限度合いを、それぞれ具体的に評価するものです。

日常生活の7つの場面

 

適切な食事 配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど。
身辺の清潔保持 洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の掃除や片付けができるなど。
金銭管理と買い物 金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど
通院と服薬 規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるなど。
他人との意思伝達及び対人関係 他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。
身辺の安全保持及び危機対応 事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
社会性 銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。

単身生活を仮定して、7つの場面における日常生活の制限度合いを、次のいずれかに判定します。

 

できる
自発的に(おおむね)できるが時には援助や指導があればできる
(自発的かつ適正に行うことはできないが)助言や指導があればできる
助言や指導をしてもできない若しくは行わない

「日常生活能力の程度」とは

 「日常生活能力の程度」とは、「日常生活能力の判定」の7つの場面も含めた日常生活全般における制限度合いを包括的に評価するものです。

知的障害を認めるが、社会生活は普通にできる。
知的障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
知的障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
知的障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
知的障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。

ガイドラインで定められている障害等級の目安

 ガイドラインでは「日常生活能力の判定」を数値化した平均値と「日常生活能力の程度」の評価により、障害等級の目安が示されています。

 具体的には、「日常生活能力の判定」の4段階評価について、程度の軽い方から1~4の数値に置き換えて平均値を算出し、「日常生活能力の程度」の(1)~(5)と合わせて、おおよその等級を導き出します。

 ただし、障害の等級はあくまで参考です。個々の等級判定は、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されます。目安とは異なる認定結果となることもあるため、注意する必要があります。

[障害等級の目安]

 

判定平均\程度 (5) (4) (3) (2) (1)
3.5以上 1級 1級 又は 2級      
3.0以上3.5未満 1級 又は 2級 2級 2級    
2.5以上3.0未満   2級

2級 又は

不支給

   
2.0以上2.5未満   2級

2級 又は

不支給

 

 
1.5以上2.0未満          
1.5未満          

※知的障害用に一部編集しています

「精神の障害用」の診断書裏面の一例

例えば上記の場合、「日常生活能力の判定平均」は(2+1+4+3+3+3+3)÷7=2.7 「日常生活能力の程度」は(3)となり、「2級 又は 不支給」が障害等級の目安となります。

等級の目安とその他考慮される要素

 等級判定ガイドラインでは目安とされた等級であっても、それだけでは捉えきれない障害ごとの特性があります。そのため、以下のような要素を総合的に考慮され、最終的な等級が決定されることになります。

養育歴、療育手帳

 発育・養育歴、教育歴などが考慮されます。

 療育手帳の有無や区分が考慮されます。

  (注)療育手帳が交付されていなくても障害年金が支給されることもあります。

 中高年になってから判明し障害年金を請求する知的障害については、幼少期の状況が考慮されます。

病状又は病態像

 知能指数が考慮されます。ただし、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度が考慮されます。

 不適応行動を伴う場合には、診断書の ⑩「ア 現在の病状又は状態像」のⅦ知能障害等またはⅧ発達障害関連症状と合致する具体的記載があれば、それが考慮されます。

療養状況

 著しい不適応行動を伴う場合や精神疾患が併存している場合は、その療養状況も考慮されます。

生活環境

 在宅での援助の状況、福祉サービスの有無、施設入所の有無、入所時の状況などが考慮されます。

就労状況

 労働に従事していることをもって、ただちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況などを十分確認したうえで日常生活能力が判断されます。

  援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮されます。 

 仕事の内容が専ら単純かつ反復的な業務であれば、それが考慮されます

 仕事場での意思疎通の状況を考慮されます。

4. 障害年金の請求(申請)手続きの進め方

 知的障害で障害年金を請求(申請)するときのおおまかな流れは、次の通りです。

1. 医師に診断書の作成を依頼する

    ↓

2. 「病歴・就労状況等申立書」を作成する

 具体的な手順はこちらのページで詳しく説明していますので、ご確認ください。

5. 知的障害で障害年金を請求(申請)するときの注意点

日常生活の自立状況は、きちんと診断書に反映されていますか?

ポイントを説明する女性のイラスト

 知的障害の障害年金認定では、診断書裏面の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」が特に重要なポイントです。

 これら2つの項目は、一人暮らしであると仮定して、医師が記載することになっています。

 日常生活の自立状況がきちんと診断書に反映されているか確認しましょう。

 知的障害の場合は、ご両親が手続きされるケースも多いと思います。

 ずっと一緒に暮らしていると、その状態が当たり前になっているかもしれません。

 医師に診断書を依頼するときは、客観的に見て、お子さまができること・できないことを伝えるよう心がけましょう。メモにまとめて渡すのも有効な方法です。

保険料納付要件は問われません

女性のイラスト

 障害年金をもらうためには、一定期間以上の年金保険料を納めていることが条件となります。

 しかし、知的障害は生来のものであるので、保険料納付要件は問われないことになっています。

受診状況等証明書は必要ありません

 的障害は、先天性またはおおむね発達期(18歳まで)にあらわれる障害のため、初診日がいつであるかにかかわらず「20歳前傷病」として扱われます。

 そのため、受診状況等証明書を取得する必要はありません。

初診日から1年6か月経たないと障害年金は請求できない?

疑問に思う女性のイラスト

 通常、障害年金は、初診日から1年6か月を経過した日から請求(申請)することができますが、知的障害の場合は、1年6か月待つ必要はなく、20歳になったらすぐに障害年金を請求(申請)することができます。

 知的障害の障害認定日は20歳到達日(20歳の誕生日の前日)です。

 障害認定日請求を行う場合は、障害認定日前後3か月以内の状態で作成された診断書の提出が必要です。

 事後重傷請求を行う場合は、請求日前の3か月以内の診断書の提出が必要です。

障害年金の請求(申請)に療育手帳は必要?

女性のイラスト

 障害年金の審査では、療育手帳の有無や区分が考慮されますが、生育歴や養護学校、特殊学級の在籍状況、通知表の結果など、客観的に知的障害があったことが分かる事実があれば、療育手帳が交付されていなくても障害年金が支給されることもあります。

6.知的障害で障害年金の支給が認定された事例

 障害年金支援ネットワーク会員のサポートによって、障害年金の支給が認定された事例の一部をご紹介します。

 複雑な手続きは、最初から専門家に任せるのも一つの方法です。

 障害年金支援ネットワークでは、ご希望があれば、手続きを代行する社会保険労務士を紹介することもできます。(詳しくはこちら

7.最後に

 このページでは、知的障害と障害年金について解説してきました。

 同じ知的障害でも、状態や程度が人それぞれ違うように、障害年金もその人の置かれた状況に応じたやり方で手続きを進める必要があります。

 何度も年金事務所や病院に足を運び書類を揃え、慣れない請求(申請)手続きをするのは大変な作業です。

 ご家族だけで進めようとせず、専門家を頼ってください。

 不安なことや分からない点があれば、障害年金支援ネットワークまでご相談ください。

 きっとお役に立てるはずです。

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